マザーズハート大学
誕生秘話

ママや子どもたちの笑顔が
溢れる世界をつくりたい。

谷口陽子さんロングインタビュー[マザーズハート大学 学長 / みのおママの学校 代表]

ママと子どもたちの笑顔が溢れる世界をつくるために「マザーズハート大学」を立ち上げた助産師の谷口陽子にフォーカス。この学び舎をはじめることになった意外な誕生秘話について迫ってみる。

インタビュー:石井恵理子

谷口陽子 さん

1974年、富山県生まれ。助産学校を卒業し、大阪の市民病院に勤務。その後、結婚・出産を経て、地域の産婦人科クリニックで活躍。2016年に地域でママや子どもたちを応援するために合同会社みのおママの学校を設立。現在は、企業や自治体と共同し、地域の子育てママや子どもたちを応援。また、ママを支える助産師さんを応援するために、じょさんし大学などの様々なサービスを展開している。

マザーズハート大学を運営している
みのおママの学校

--- マザーズハート大学を運営しているみのおママの学校ってどんな会社ですか?
谷口陽子(以下、谷口):一言で言うと、ちょっとクレイジーな会社です(笑)。
とても小さなチームですが、ママと子どもたちが笑顔になれる世界をつくりたくて様々な活動をしています。
--- 具体的にはどんな活動をされていますか?
谷口:地域ではとても素敵な企業さんとコラボして、ママの居場所づくりやマルシェの開催など、子育てママを応援しています。地域の活動だけではなく、ママを支える助産師さんを応援するために、助産師さんのカウンセリングや、助産師さんの学び舎としてじょさんし大学やマザーズハート大学などの運営をしています。
http://minomama.com
みのおママの学校のコアメンバーたち

ママと話せなかった助産師がつくった
マザーズハート大学

--- じょさんし大学はとても有名ですよね。きょうは、姉妹校のマザーズハート大学のことについてお聞きしたいと思っています。まず、マザーズハート大学は何がきっかけではじまったのですか?
谷口:きっかけは、今から約4年くらい前に、現在、マザーズハート大学で講師をしているりっちゃん(下熊梨都子)がみのおママの学校が運営する地域の子育てひろばに参加したことです。りっちゃんは、助産師として10年以上クリニックで働いていたので、ママたちと普通に話せると思っていたみたいです。でも、実際に話しをしてみると、全然話せなくて、自分でもびっくりしたみたいです(笑)。
--- ママと話せなかった助産師さんがマザーズハート大学で講師を?
谷口:そうなんです(笑)。助産師さんって、病院だと、指導やアドバイスなど、ママに伝えるべきことが大体決まっているし、業務の都合などもあって、ママと心と心の距離を近づけてゆっくり話しをする機会ってとても少ないんです。だから、りっちゃんが特別なわけではなくて、多くの助産師さんが地域でママと関わる時にはじめて気づくんですよね。「あれっ、私、ママと話せいないやん!って(笑)」。
みのおママの学校のコアメンバーたち
--- なかなか興味深いエピソードですね。
下熊梨都子(以下、下熊):そうなんですよ!お天気の話とか、子どもさんの話とかはできるんですけど、心が繋がってるような会話が全くできなかったんです。
今では笑い話に出来ますが当時はちょっとショックでした(笑)。
--- 具体的なエピソードはありますか?
下熊:みのおママの学校を谷口と一緒に立ち上げた新名という男性メンバー(マザーズハートカウンセリング開発者)がいるんですが、当時、彼も子育てひろばに参加していたんです。彼と話をしているママたちがとってもリラックスしていたり、笑顔になっていったり、時折涙を流したり。「あの一言が勇気になってずっと頑張れました!」「また話がしたい!」って、ひろばに通われるママがたくさんいて、自分との差に愕然としました。
--- そうだったんですね。
下熊:当時の私は、助産師の資格をもってる自分に自信をもってたんです。でもね、ママと関わるのに資格関係ないやん!って思いましたね!(笑)
マザーズハートカウンセリング開発者である新名智樹。とてもシャイ?なので、このような場にはいつも登場しません(笑)。
--- そこからどのようにマザーズハート大学が誕生することになったのですか?
下熊:来る日も来る日も、つどいのひろばの後に、新名にママとの関わり方を具体的に教えてもらっていたんです。例えば、「言葉の奥にある本音をどう感じるのか?」「非言語のメッセージ(表情や仕草など)にどう気づくのか?」「会話の進め方や質問の仕方」など、本当にたくさんのことを教えてもらっていました。もちろん、自分たちの在り方についても。そして、ある日気付いたんです。
--- 気になります。何に気がついたのですか?
下熊:これって、私だけが教えてもらったらもったいないやん!って。助産師は医療の専門家だけど、ママの心の専門的ではないことに気づいたんです。例えば、産前産後の過ごし方や医療的なアドバイスは自信をもって出来るけど、私と同じように、ママと心と心を近づけて話をすることが出来ない助産師さんって少なくないのかもって思ったんですよね。だから、この学びを体系化して広めることで、たくさんのママに貢献できるって確信したんです。 

ママの心の奥を感じる
マザーズハートカウンセリング

--- ということは、新名さんの知識や経験がマザーズハート大学のベースになったのですか?
谷口:はい、そうです。彼は子どもの頃から、いつもまわりにいる人たちがどうすれば喜ぶのかなど、人の心を感じることが得意だったそうなんですよね。確かに、ママの心に気づく力や会話などは、誰よりも優れているなって、近くで見ている私たちも日々感じていて、りっちゃんが新名から学んだカウンセリングスキルなどの内容がマザーズハート大学で伝えている「マザーズハートカウンセリング」のベースになっています。
--- マザーズハートカウンセリングの対象者はどんな方ですか?
谷口:ママたちの中には、いろんな状態の方がいます。もちろん、今が充実していてサポートが必要ない人もいるし、心が疲れてしまい、お薬や治療など、医療のサポートが必要な人もいます。ただ、とても大切なことが見落とされているんです。それは、このどちらにもあてはならないママたちの存在です。
--- どちらにも当てはまらないママの存在?
谷口:そうなんです。私たちが関わるママの多くは、一見、何も問題もないように見えます。だけど、本当は違っていて、いつも人の目が気になったり、まわりに頼りたいのに頼れなかったり、誰にも本音が話せなかったり。その原因は、家族や実母との関係が影響していたり、思春期などの交友関係でのつらい出来事などが、影響していたりすることが多いんですよね。とにかく自分に自信をもって生きることに難しさを感じている女性が本当にたくさんいらっしゃるんです。
--- なんかすごくわかる気がします。私も同じだと思います。
谷口:日々、本当にたくさんのママたちと接していて感じるのは、7割くらいの女性が自分で自分にマルをつけることが難しかったり、対人関係に、いろんな悩みを持ちながら生きているように思います。
--- 本当に7割もいるのですか?私は自分みたいな人は少数派だと思っていました。
谷口:あくまでも私たちの感覚ですが、自分に自信をもって生きられていないママは本当に多いです。自分の悩みを誰かに打ち明けることにも難しさを感じているママが多いですし、一見、元気に見えたり、悩みがないように見えるので、まわりの人たちが気づかないんですよね。
--- なぜ、このようなママが多いのですか?
谷口:日本では、ほとんどの人が同じような教育(評価・競争)を受けたり、子育て(不安定型の愛着形成)されてきていたりしますからね。なので、同じような悩みを抱えているママが多いことに私たちは疑問を感じません。このあたりは授業でも時間をかけてお伝えしています。 

ママたちの願いは
自分に自信をもって笑顔で生きること

--- 実際のカウンセリングなどの現場でママから求められていることは何ですか?
谷口:それは「自分に自信をもって笑顔で生きたい!」ということ。最近、よくSNSなどで「自分を大切にしよう」とか「こうすれば幸せになれる」とか、簡単にいう人も多いですが、自分に自信をもって笑顔で生きるって、そのフェーズに行くことは、本当にひとりでは難しいんです。
--- 確かに難しいと思いますが、それはなぜなのでしょうか?
谷口:そのフェーズに行くには、まずは、自己を受容することが大切になるのですが、それがひとりではなかなか出来ないんですよね。なぜかというと、多くのママが自分のことを知らなかったり、自分を肯定するために自分をつくっていたりするんです。そのような状況の自分にマルをしようとしても、それは自己受容にはつながらないんです。
--- わかるような気もするけど、なんか難しいです。
谷口:そうですよね(笑)大切なのは、ありのままの自分を受け入れることです。(生きるために)鎧を着てきた自分が、鎧を脱ぐことはすごく怖いことだと思います。そして、それがひとりでは本当に難しいんです。大切なのは、カウンセラーとの信頼関係を時間をかけて築きながら、ママのペースで変わっていくことなんです。みんな自分の価値を自分で感じることが難しい。私たちの関わりはまずはそこからだったりします。

愛着形成をベースにした関わりを通じて
ママを自己実現へとガイドする

--- マザーズハートカウンセリングはどのような関わりになりますか?
下熊:繰り返しになりますが、まず何よりも、自己を受容できるようになることです。そのために、愛着形成を意識した関わりを通じて、自分が自分でいいんだと思えるように、自分で自分にマルをつけられるに、関わりをスタートしていきます。最終的なゴールは、ママを自己実現のフェーズへガイドすることです。マザーズハートカウンセリングはとてもシンプルですが、とても奥が深い関わりになります。この辺りは説明すると少し長くなっちゃうので、この先は、授業を受けてくれる受講生さんにだけお伝えしたいと思います(笑)。
--- マザーズハートカウンセリングの効果を教えてください。
下熊:本当にみんな変わっていきます。自分を肯定できず過去ばかり見て生きていたママたちが自分に自信をもって笑顔で生きられるようになる。そんな姿を見ていると本当に感動するし、私たちに出会い関わっていくママたちの変化に、私たち自身が驚くことがあるくらいです。
--- 大学との共同研究でも結果が証明されていると聞きました。
下熊:そうなんです。これはちょっと面白い話があって。3年くらい前に、某大学の先生が私たちに地域の活動に興味をもってくださり、地域の助産師さんとの関わりでママたちが元気になっていくことを研究したいと言って下さる先生がいたのですが、新名が「それなら、僕とママや助産師さんの関わり(カウンセリング)を研究したら「自己受容」について面白い数字が出ると思いますよ!」って、プレゼンをはじめたんです(笑)。
--- と言うことは新名さんとの関わり方が研究対象になり、それがそのままマザーズハートカウンセリングだと言うことですか?
下熊:はい、まさにその通りなんです。1年かけて当時新名がパーソナルでカウンセリングをしていた約30名の方を対象に研究を進めたのですが、愛着スタイルの変化や自己受容の数値などで、先生たちも驚くような数字が出てビックリされていました。将来、学会でも発表されると思います。

いつでもマザーズハートカウンセリングを
ベースにした関わり

--- カウンセリングはすべてパーソナルで行われるのでしょうか?
谷口:基本は、パーソナルですが、最近では、私たちは日常の対人関係がそのままマザーズハートカウンセリングになっているように思います。
--- 日常の対人関係がそのまま?
谷口:そうなんです。相手に悩みがあるない関係なく、すべての人との関わりのベースになってくるんです。なので、地域の子育てひろばなどで出会うママたちに対しても、マザーズハートカウンセリングがベースの関わりを無意識にしているんだと思います。

人との繋がりで
本当に大切なことを体験できる学び舎

--- 最後に、マザーズハート大学の内容について教えてください。
下熊:簡単に説明すると、ママのことを知り、自分たちの在り方を知り、ママとの関わり方を知る授業内容となっています。
トレーニングキャンプは、たくさん卒業生と一緒に学びを深め合う最高のコミュニティ。
--- マザーズハート大学の特徴はありますか?
下熊:一番大切にしていることは、ただ知識を学ぶだけではなく、生徒さん自身がここで実際に様々な体験をしながら学べることです。知識はどこでも学べますが、体感と共に学びを深められる環境はあまりないように思います。
例えば、愛着形成ひとつをとっても、言葉で学ぶだけではその大切さがわからないし、自分が体験していないことは、ママに伝えることも、感じてもらうことも出来ない。だから、学びと体験の両方を同時に提供できることがマザーズハート大学の大きな特徴だと思っています。卒業生からは、自分自身に向き合う期間になったこともすごく大きな体験だったという声をたくさん聞きます。
--- 自分自身に向き合う期間?
下熊:はい。カウンセラーにどれだけ知識やスキルがあっても、自分のことを知らなかったり、自分のことをオープンに語れなかったりという状態で、心を開いてくれるママはあまりいません。カウンセラーも同じ女性です。ママと同じようなライフスタイルを形成し生きてきた方もともて多いので、安心安全なコミュニティの中で自分に向き合う経験が出来ることを、とても喜ばれています。みんなに自分の話をゆっくり聴いてもらう体験は、自分たちの在り方を学べたり、自己開示の難しさを学べたりもするので、とても大きな学びがあると思います。
--- 授業はオンラインですか?
下熊:はい。学びはオンラインになります。ただ、在学中や卒業後にリアルでつながる受講生さんが多くて、本当に伝えたいことを体感してもらう機会が多くなることはとても嬉しいです。

マザーズハートカウンセラーを
1000人誕生させます!

--- マザーズハート大学の今後の目標を教えてください。
谷口:今この瞬間もサポートが必要なママがたくさんいます。一方で、そんなママたちをサポートできる人が本当に少ない。残念ですが、それが現状です。だから私たちは、「助産師×ママの心の専門家」であるマザーズハートカウンセラーを1000人誕生させることを今はひとつの目標としています。そして、ここで出会った助産師さんと卒業後も繋がりながら、ママや子どもたちの笑顔がいっぱいの世界をつくっていきたいです!
--- 最後に、次回の募集についても教えてください。
谷口:ありがとうございます。19.20期の募集が、5月22日(月)にスタートします。いつも卒業生の紹介などですぐに満席になってしまうので、興味ある方は、ぜひ、お早めに、ポチッとしていただけたら嬉しいです。また、お知り合いで
興味がありそうな方がいたら、ご紹介いただけても嬉しいです。
--- 今日は貴重なお話を聞かせていただき本当にありがとうございました。
谷口・下熊:こちらこそ、貴重な機会を本当にありがとうございました。

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